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あんごこうだん

安吾巷談

坂口 安吾

02 天光光女史の場合

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,650 字 · 22 页

青空文庫

私は恋愛だとか結婚というものを処世の具に用いることを必ずしも悪いとは思わない。なぜなら、どんな熱烈な恋心でも、決して永遠のものでは有り得ないからだ。恋心は必ずさめる。きまりきっているのだ。もしも人間が自分の情熱に忠実でなければならないとすれば、なんべん恋愛し、なんべん離婚し、結婚しても、追いつきはしない。結婚などゝいうものは、その出発の時はとにかくとして、あとは約束事であり、世間並のものであり、諦めの世界でもある。だから、結婚を処世の具に用いるぐらい、当然なことでもある。

この自覚がハッキリしておれば、よろしいのである。

かと云って、私は選挙対策のために結婚しました、とも云えなかろう。別に云う必要もないのである。

しかし、処世の具でもあり、一途の恋心によってでもある、ということは成り立たない。二者併存しておれば、何のナヤミ、何の面倒があろうか。

もしもナヤミと面倒があったとすれば、天光光氏の場合に於ては、

一、政治的に対立するものの結婚生活が成り立つか。

二、男には妻子があった。

三、以上の理由で父が反対している。

ということで、すでに前々から云う通り、この骨子に関する限り、珍奇なところはないのである。