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あんごしんにほんふどき
安吾新日本風土記
02 第一回 高千穂に冬雨ふれり≪宮崎県の巻≫
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,371 字 · 34 页
のかも知れないのだが、これがまことの文化というものなのだろう。
この蛤の碁石がいつか日向蛤というものに定着したのはどういう次第か知らないが、たぶん大きな蛤が日向に多いせいかも知れない。蛤というものは食物だ。厚さ四分五分という碁石がとれるような蛤ならよほど大きいに相違なく、貝殻を碁石にすれば当然その肉は食べなければならないわけで、私はその大蛤を食ってみたいと思っていたのだが、あいにくの下痢で諦めなければならなかった。
日向では土地の人が見せたがるものよりも忘れているものの方に心をひかれるものが多い。たとえば大蛤の場合にはその肉がどうなっているのだろう、うまい料理を発明して食わせる人がいないのかなぞということが大そう旅人の気懸りになるのである。神様の場合でもそうだ。土地の人が見せたがる神々よりも高千穂太郎なぞが心をひかれるのである。それというのも、土地の本当のイノチというものがその方に籠っているからに相違ない。
いったいに九州は駅弁がすばらしいところで、私たちは駅弁を食うのが楽しみであった。宮崎県内を自動車で走りながらも中食は駅弁を買って食うのを楽しみにしていたものだが、山中へはいると旅館が土地の食べ物を食べさせてくれないので残念だった。