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あんじゅうこん

安重根

谷 譲次

――十四の場面――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,548 字 · 100 页

青空文庫

今にぞろぞろ日本の水兵が上陸して来る。そうすると、ここらの露路うらから、化物のように白粉を塗りまくったロシアの女房たちが、まるで革命のように繰り出して行って、桟橋通りを埋めつくすのだ。そして、街全体は瞬く間に、唄と笑いと火酒の暴動だ。ははははは、女たちの仕事は、実行の上で、僕らよりずっと国境を越えているんだからかなわないよ。

李春華 ロシアの女ばかりじゃあありませんわ。このごろでは、この辺の朝鮮の女まで、日本の水兵と聞くと、眼の色を変えて騒いでいますわ。

李剛は、これらの話し声をよそに、机上に頬仗をついてパイプをふかしながら、凝然と考えこんでいる。窓の残光徐々に薄らいで、この時は室内に半暗が漂っている。

柳麗玉 (書き物を続けながら)いいじゃあありませんか。何もできない人は、そんなことでもして、日本人からうんとお金を搾ってやるといいんだわ。

卓連俊が、水のはいっているバケツを提げて、あわただしく上って来る。

卓連俊 (戸口に立ち停って階下を見下ろす)どうもいけ図々しい野郎だ! 角の床屋です。いけねえって言うのに、どんどん上って来やあがる――。

朴鳳錫 (ドアへ走って)角の床屋? 角の床屋って、あの、スパイの張首明か。