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あんじゅうこん

安重根

谷 譲次

――十四の場面――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,548 字 · 100 页

青空文庫

下手寄りに、出入口のドアが開け放されて、街路の灯りがかすかに流れ込んでいる。正面中央に、階上の大東共報社へ昇る階段が、下から三分の二ほど見える。舞台はほとんど闇黒。

前の場の続き。前場の人々全部と、理髪師張首明、白基竜、安重根。白基竜は朴鳳錫と同じ若い独立党員で、大東共報記者。

正面の階段を、理髪師の白衣を着た張首明が、突き落されるように降りて来る。朴鳳錫と鄭吉炳は、階段の中途に立ち停まって足だけ見えている。

張首明 (階段の根に身を支えて)何をするんです。乱暴な! 李先生に用があるんですよ。

朴鳳錫の声 何だ。だから、何の用だと訊いてるじゃないか。

鄭吉炳の声 張さん、ここは君の来るところじゃないぜ。用があるなら、僕らに言いたまえ。先生に取り次ぐから――。

張首明 私も来たかありませんがね、伝言を頼まれたから、仕方なしに来たんです。

朴鳳錫 (駈け降りて来る)こいつ! 貴様が先生に用のあるはずはない。おい、鄭君、こんなやつと真向に口利くことないんだ。抛り出しちまおう。

鄭吉炳 (続いて駈け降りて朴鳳錫を制する)待てよ。いいから待てよ。(張首明へ)君も強情だな。