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あんじゅうこん

安重根

谷 譲次

――十四の場面――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,548 字 · 100 页

青空文庫

李剛 (笑い出して)それはどういう論理かね?

安重根 そうじゃありませんか。先生はさっきからしきりに同志同志と言いますが、僕はこのごろ、その同志というやつが重荷のように不愉快なんです。(突然、叫ぶように)いったい同志とは何です! 同志なんて決して、実現しない空想の下に、めいめい、その決して実現しないことを百も知り抜いていればこそ、すっかり安心しきって集っている卑怯者の一団に過ぎません! お互いに感激を装って、しじゅう他人の費用で面白い眼にありつこうとしている――。

李剛 (微笑)まったくそのとおりだ――。(間)おお、君、飯はまだだろう?

安重根 この私の場合がそうです。なるほど私は、この計画を二、三のいわゆる同志に打ち明けて相談したことがあります。(李剛の傍に坐る)ええ、まだです。じつは、朝から何も食べずに、今まで考えながら歩いていたのです。

李剛 自宅へ行くと何かあるようだが――。(とルバシカの懐中から紙入れを引き出して、そっと紙幣を数えながら)しかし、それは君、君自身の心持ちに、外部から突っかえ棒を与えて、いっそう決行を期そうとしたのじゃないかな!

安重根 そういう気持ちも、あるにはありました。