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あんじゅうこん

安重根

谷 譲次

――十四の場面――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,548 字 · 100 页

青空文庫

劉東夏の眠っているのを見すまし、そっと手を伸ばして鼻を摘もうとする。劉東夏は口の中で何か呟いて払う。

女 (低く笑って)門番さん! ちょいと門番さんてば! 何だってそんなところに頑張ってんのさ。寒いわ。わたしんとこへ来ない? はいってもいい?

劉東夏は眼を覚ます。

女 (小声に)まあ、あんた子供じゃないの? 可愛がって上げるわ。いらっしゃいよ。あたしの部屋へさ。廊下の突き当りよ。

劉東夏 いけないよ、そんなところから顔を出しちゃあ。叱られるぞ。

禹徳淳が寝台に起き上る。女はあわててドアを閉めて去る。

禹徳淳 また淫売かい。

劉東夏 (笑って)ええ、あいつとてもうるさいんです。

禹徳淳 何時だい。

劉東夏 さあ――今三時打ったようですよ。

禹徳淳 かわろうか。

劉東夏 いいんです。もう少ししたら――。

禹徳淳 起したまえ。かわるから。

禹徳淳が再び寝台に横になると同時に、弾かれたように安重根が起き上る。

安重根 ひどい汗だ。(腋の下へ手をやって)こんなに寝汗をかいている。

禹徳淳 (ベッドから)よく眠っていたよ。君は朝までぐっすり眠らなくちゃあ。僕と劉君が代り番こに起きているから大丈夫だ。