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たぬきじる

完本 たぬき汁

佐藤 垢石

佐藤垢石『完本 たぬき汁』。同一底本的分册已合并为一书。收入:たぬき汁、『七面鳥』と『忘れ褌』、海豚と河豚、うむどん、縁談、議会見物、採峰徘菌愚、酒渇記、酒徒漂泊、すっぽん、増上寺物語、淡紫裳、探巣遅日、盗難、濁酒を恋う、にらみ鯛 、春宵因縁談、姫柚子の讃、美音会、みやこ鳥。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 133,158 字 · 273 页

青空文庫

これは爪の先が磨滅して鈍くなっている。ところが、泥底に棲んでいたものは、爪の先が鋭く尖っている。養殖のすっぽんも同じことだ。すっぽんを買うときには、よく爪の先を究めねばならないのである。

このほど、宮城のまわりの堀渫いをした時に数匹のすっぽんが網に掛かってきたのを見ると悉く爪の先が鋭くとがっていたというが、これはお堀の底が、泥であるのを物語っているのである。そして、すっぽんは卵を産んでから後は、十月の末頃まで川の中で餌をとっていて、晩秋の冷気がくると川の底の砂にからだを埋め、首だけ出して冬眠に入る。

重松代議士は、盥のふちに双手をつきながら、こんな話を長々として、最後に、

『娘共の料理では、大したこともあるまい。明日は、からだが閑だから一番僕が手をかけて、このすっぽんを割烹して進ぜよう。お腹をすかせて置いて、やってきませんか』

と、呵々と笑う。随分、腕に自信がある風であった。(一三・一〇・八)