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たぬきじる

完本 たぬき汁

佐藤 垢石

佐藤垢石『完本 たぬき汁』。同一底本的分册已合并为一书。收入:たぬき汁、『七面鳥』と『忘れ褌』、海豚と河豚、うむどん、縁談、議会見物、採峰徘菌愚、酒渇記、酒徒漂泊、すっぽん、増上寺物語、淡紫裳、探巣遅日、盗難、濁酒を恋う、にらみ鯛 、春宵因縁談、姫柚子の讃、美音会、みやこ鳥。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 133,158 字 · 273 页

青空文庫

竹と蘭を描いた。絵はさほどうまいとは思わなかったが、女がしかも日本でいえば芸妓が、墨の濃淡こまやかに筆を運んでゆくことに、ただ感心して見たのであった。

それから牡丹台へ行った。標高僅かに三百尺位の牡丹台であるが、一番高いところに登ると、四方へ闊達に開けた大同江平野が一眸のもとにあった。

大同江が東北の遠い山の間から流れて帯のようにくねって曲がり、下流は悠々と流れて霞の中に消えている。折りから雨はれて、水蒸気が霞か靄に変わったのであろう。果てしない大陸の平野は夢のように淡く続いている。朝鮮の霞だ。京城では、大陸へきたという感は起こらなかったがこの牡丹台から眺める雄大な景観に接して、はじめて遠い国に旅してきたという思いを催したのである。

玄武門も見た。大きな門ではなかったが、昔子供時代に原田重吉がこの門を乗り越える木版画を見たのを思い起こして、ある感慨に打たれた。

ゆるやかに流れる大同江の水上に、画舫がいくつも浮いている。牡丹台の岸にれんげが咲き始めた。

山の中腹にある平壤博物館へ行った。既に時間が過ぎて閉門したのであったが、遠来の客とあって館長が特に案内して中を見せてくれた。