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たぬきじる

完本 たぬき汁

佐藤 垢石

佐藤垢石『完本 たぬき汁』。同一底本的分册已合并为一书。收入:たぬき汁、『七面鳥』と『忘れ褌』、海豚と河豚、うむどん、縁談、議会見物、採峰徘菌愚、酒渇記、酒徒漂泊、すっぽん、増上寺物語、淡紫裳、探巣遅日、盗難、濁酒を恋う、にらみ鯛 、春宵因縁談、姫柚子の讃、美音会、みやこ鳥。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 133,158 字 · 273 页

青空文庫

老父は、孫娘を弟の若い未亡人に抱かせて東京へやってきた。家内は、俄に二人の母親となったのだ。家内は二人の子供をよく育てた。私は家内に感謝した。上の方が人工営養を離れたころ、間もなく次の子の人工哺乳がはじまったわけである。弟の子は、千鶴子と名付けてあった。この子も、丈夫の子であった。

私の家内に子供が産めなかったというのは、どこがどういうわけはないが、ひよわの性でいつもぶらぶらしていたためであったのであろう。ところが俄の子持ちとなり、それが一年あまりの間に一人が二人となったのであるから、家内の労働はいままで想像もしてみなかったほどはげしくなった。そのために、いつの間にか家内は病魔を征服して、細い骨に肉がまるまるとついてきて、三、四年前とは見違えるように健康の体格となったのである。

みゑ子が五歳、千鶴子が四歳のとき、家内はある日、心配そうな表情して、わたしこのごろ何ですか変なの。下腹に癌のようなかたまりができて、それが動くような気もしますわ。病気じゃないでしょうか? わたしひょっとすると妊娠じゃないかと思うのですけれど――と、私に妙なことを訴えた。