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たぬきじる
完本 たぬき汁
佐藤 垢石
佐藤垢石『完本 たぬき汁』。同一底本的分册已合并为一书。收入:たぬき汁、『七面鳥』と『忘れ褌』、海豚と河豚、うむどん、縁談、議会見物、採峰徘菌愚、酒渇記、酒徒漂泊、すっぽん、増上寺物語、淡紫裳、探巣遅日、盗難、濁酒を恋う、にらみ鯛 、春宵因縁談、姫柚子の讃、美音会、みやこ鳥。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 133,158 字 · 273 页
何とかして、生きていこうと考えた。八幡の駅の改札口を出て、小さい旅行鞄を左の手に、毛布を右の手に抱えて田圃の方へ出た。このあたりには、広々と敗荷の池が続いていた。これから、どこへ行こうという目あてもない。
『夜逃げ』の首途に、夜の新橋駅の石畳の上に立った時には、自己革命を心に誓ったのではなかったか。真面目になろう。人間らしくなろう。これからは、決して酒も飲むまい。女も買うまい。きょうを最後に、おれは生まれ代わるのだ。
だのに、高知へ着くとけろりとして酒を飲んだ。新橋駅の心の誓いなどてんで思い出してもみなかった。神戸へ上陸してからは、なけなしの財布の底を叩いて福原遊廓へも走り込んだ。おれという人間はもう箸にも棒にもかからないのだ。
野の道に腰をおろして、西の方を見ると、八幡の町から田圃を隔てた新緑の林を貫いたお寺らしい大きい甍が眼に入った。もう財布に一銭もない。今夜から食うこともできなければ、また泊まるところもない。ふと、寺のお弟子になったらばと、思った。弟子になれたなら、食うことばかりではない、おれの性根もなおるだろう。
私は、田圃の畦道を歩いた。