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たぬきじる

完本 たぬき汁

佐藤 垢石

佐藤垢石『完本 たぬき汁』。同一底本的分册已合并为一书。收入:たぬき汁、『七面鳥』と『忘れ褌』、海豚と河豚、うむどん、縁談、議会見物、採峰徘菌愚、酒渇記、酒徒漂泊、すっぽん、増上寺物語、淡紫裳、探巣遅日、盗難、濁酒を恋う、にらみ鯛 、春宵因縁談、姫柚子の讃、美音会、みやこ鳥。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 133,158 字 · 273 页

青空文庫

蜂の子を一匹ずつ巣から、ピンセットで引っ張り出し、それをそのまま味醂、醤油、砂糖でからからに煮てもよし、塩にまぶして焙烙で炒ってもいい。油でいためればさらによく、蜂の子めしに至っては珍中の珍だ。

とは言え、さきほど申す通り、塩をふって生きているままを食うのに越したことはないのである。そこでまあ、食味のことは巣を採ってから、お互いに賞翫することにして、食うことよりも巣を発見するまでが面白い。山野を跋渉しなければならないから健康的で、まず新スポーツとでも言えるだろう。厚生省が高唱している体位向上の主旨にも叶うわけだ。

まあ、騙されたと思ってついてき給え、明夜は蜂の子で送別の乾杯だ。

二

昨年の十月下旬の某日、私と痘鳴と、大妖と論愚の四人は斜酣のあとへ從った。目ざすところは、武蔵野の大泉方面の叢林である。

斜酣を先導として武蔵野鉄道の大泉駅へ下車して村を抜け、野路を越えて畑のなかへ出た。折りから漸く秋深く、楢と椚の林は趣をかえて紅葉の彩に美しい。芒の穂も茅の穂ももう枯れた。

五、六十間さきへ行った斜酣は、畑の中で何か踏んづけた模様である。踏んづけたものを、斜酣は右の手で抓みあげた。