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ほうえいふんか

宝永噴火

岡本 かの子

「文学界」1940(昭和15)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,505 字 · 62 页

青空文庫

そしてただ裸一箇の自分となり独力、座禅思惟の一法によってかの解脱を掴むか掴まえぬか、面と向った真剣の勝負に驀地に突き進むこととなった。

明けて宝永四年、慧鶴は二十三歳となった。その道に入り切って右往左往していると妙なもので彼も雲水社会に多少名を知られるような一人となった。変った修業者、愚直に見える修業者、だが、どこか真面目なところもある。そういった評判だった。そして引立てて呉れる先輩も出来、引廻して貰おうとする後輩も出来て来た。

同輩ぐらいの年期の雲水は彼を信じられる頼母しい友人と認めて伴れになることを好んだ。しかし、彼は、どんなに多くの仲間と伍しているときでも心は孤独だった。むしろ、そういうときほど自分が取付かれている世にも不思議な神秘に対するあこがれが非常識に目立って自分を片輪もののように感じさした。さればといって彼等と同じ程度の慾望や生活に歩調を合わすことは出来なかった。それは穏健無事には違いないが自分には何の魅力も持ち来さない。当時普通に禅でいうところの虚空的な心の自由が得られて、日々これ好日の生涯を経るという程度の幸福なら、格別欲しくもなかった。