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ほうえいふんか

宝永噴火

岡本 かの子

「文学界」1940(昭和15)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,505 字 · 62 页

青空文庫

七兵衛の話では、この先どうなり行くか、これがこの世の終りかも知れない。そんな噂が立って、この騒ぎの中に酒盛りをして乱痴気騒ぎをしている連中もある。そんな連中は世間憚らず女にからかいかけるので白昼でも女の一人歩きはしなくなった。また金なぞ持っていたとて仕方がないとパッパと使い散らすものがあると同時に、今更銭を受取ってどうなるものかと物を売らなくなったので、物価だけ無闇に高価くなったけれども銭は殆んど通用しなくなった。こんな村の話をした。

慧鶴が真底から決死の覚悟を定めたのは石や灰が降り出したからであった。初めのうちは白灰であった。昼でも濛々として宵闇の膜の中に在るようだった。灰が薄れると太陽が銅色や卵黄色に見えた。その次に石が降って来た。白くて塩の塊のような石だ。そこらじゅうの物に降り当る音は軽いけれどもやっぱり不気味な音だった。寺の縁にもときどき落ちて来た。中に火気が籠っていて、落ちた石が触れる縁板はぷすぷす煙を立てた。枯葉の塵塚に落ちたものからは火の手を挙げた。寺の男共は盥を冠って水桶を提げて消して廻った。村で二三軒小火を起した家もあった。草葺屋根にも出来るだけ水を撒いた。