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みのるさんのせいしんぶんせき
実さんの精神分析
夢野 久作
「喜多」1932(昭和7)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,886 字 · 10 页
文句なしにいいお能だなと思わせられる。そのほか粟谷さんの宛転自在さ。後藤さんのお手本のようにコックリとした演出味なぞ、いずれも立派な明るい、舞台表現として頭を下げさせられるが、実さんのお能を見ると、そんなものがちっとも感じられない。サッパリ面白くない。暗い。つまらない。荒地の中で建築の骨組だけ見せられているような気持になることが多い。どうかすると面と装束を着た骸骨が、型通りに謡い舞っているように見えたり、又は何処かの拳闘の選手が、昔の大家の霊に魘されながら、醒めよう醒めようと苦悶しいしい演じているようにも見える。舞台の何処かで眼に見えない鬼火がトロトロと燃えているような……ソンナ時のスゴイこと……。そうしてただそれだけである。実さんのお能から感受されるものはソレ以外に何物もない。白い骸骨と青い鬼火だけ……これは何故であろうか。
これは説明しない方がいいかも知れない。又説明出来ないものかも知れない。現代の能楽界でタッタ一人そんな能を舞い得る青年として、ソッと取って置く方がいいかも知れない。この考えは同感の人が些くないであろうと思う。
ところが豈計らんやである。