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きゃくぎらい
客ぎらい
谷崎 潤一郎
「文学の世界」1948(昭和23)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,162 字 · 14 页
取次に出る女子供に取っては、面倒な言訳をするより「只今主人は留守です」と云ってしまうのが一番簡単だからであろうが、私はこの手を用いるのが嫌いなので、家の者を警めて、「主人は在宅しておりますけれども、紹介状を持たない方にはお目に懸らないことにしております」という意味を、せい/″\慇懃な言葉を以て、客に徹底させるようにしている。それは何よりも、客のためにウソを吐くことが癪だからであるが、―――狭い家だとウソを吐いたために便所へも行けず、シャックリやクシャミも出来ないのである。―――居ても会わないのだと云うことをはっきりさせて置かないと、二度も三度も訪ねて来るようなことになって、交通難の折柄、客にもいよ/\迷惑を掛けるからである。しかし書生だとよいが、女が出ると、つい云わないでもよいおあいそを云い、それに只今は生憎忙しゅうございまして、とか何とか餘計な文句を附け加えて意味をボカスようなことがありがちである。ナニ、怒っても構わないからもっとはっきり云いなさいと云うのだけれども、客に依っては腹を立てて詰問したり、執拗に食い下ったりする人があるので、女ではとかくそこのところがきっぱり行かない。