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ずいひつ よせばやし
寄席囃子 正岡容寄席随筆集
正岡 容
正岡容『寄席囃子 正岡容寄席随筆集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:随筆 寄席囃子、艶色落語講談鑑賞、随筆 寄席風俗、寄席行灯、わが寄席青春録。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,259 字 · 222 页
やまとはそこで才賀なる父の名を襲いで、それから死んでいったのだ)。
私が、やまとを聞いては感心していたのは、されば、まだ、文楽の時分だった。――勝栗のように頭が禿げて、声が江戸前に渋く嗄れて、鼻唄ひとつが千両だった。江戸もん同士がひどく気さくで、御代は太平五風十雨で、なんともいえず、嬉しかった。私は、「俳諧亭句楽」の中の蛇の茂兵衛という小唄師をさえ、よく、彼を聞けば、考えさせられた。
だが、それならば、私はそんなにしげしげ彼を聞いたかといえば、そうじゃない。うちに隠れては昼席入りをしていた、少年の日のどんたくに、あるいは、庭のかなしくなつかしかった暮春の若竹で、あるいは、瓦斯の灯のよるべなく青い、どこか、もう忘れてしまった町の夜席で、――そんなところで数えるほど、それも決まって「三人旅」の「とろろん」だった。同じ話を数えるほど。ただ、その「数えるほど」でありながら、なぜかそれが死ぬほど、私には愛好された。文楽は、ぼくの大好きだった品川の圓蔵(橘家・四代目)以上に、めずらしい、軽い、日傘のような、噺家ぶりであるよ! とさえ想われたのである。
こういうことは、すこし、寄席入りに浮身をやつしている人ならかつて訪れた城下町の記憶を見るように、たいていがもっている心持ちだろう。