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ずいひつ よせばやし

寄席囃子 正岡容寄席随筆集

正岡 容

正岡容『寄席囃子 正岡容寄席随筆集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:随筆 寄席囃子、艶色落語講談鑑賞、随筆 寄席風俗、寄席行灯、わが寄席青春録。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,259 字 · 222 页

青空文庫

巨匠圓馬病みて以来ほんとうにもう彼以外の何人に、これを求めることができよう。

この人の「鰻の幇間」に大正初年の旧東京のあぶら照りする街々の姿をば呼吸できる人、「花瓶」のお国者の侍がしびん片手に得意満面、馬喰町辺りの旅籠さして戻り行く後ろ姿に舂いている暮春の夕日の光を見てとれる人、さては「馬のす」の釣竿しらべている主のたたずまいに軒低く天井暗かりし震災以前の東京の町家の気配をさながらに目に泛べられる人。

それらの人たちはことごとく、前述のこの人への私の言葉の過褒にあらざることを、即座に首肯してくれるだろう。

しかも、この文楽、今に永遠の青年としての不断の情熱を、研究心を、もち続けている。

現に「富久」「馬のす」「花瓶」など、ついこの間、研究初演したばかりだし、引き続き「芝浜」「九州吹戻し」と一つ一つ年月をかけて、己のレパートリィを増やしていこうと精進している。それがまったく当たり前のこととはいいながら、これだけの芸境に達していてなおかつ、この努力、この勉強――。

あえて――あえて言う。他に何人あるか(恐らく志ん生以外にあるまい、大看板では)。

私はそこに傾倒するのだ。