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ずいひつ よせばやし

寄席囃子 正岡容寄席随筆集

正岡 容

正岡容『寄席囃子 正岡容寄席随筆集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:随筆 寄席囃子、艶色落語講談鑑賞、随筆 寄席風俗、寄席行灯、わが寄席青春録。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,259 字 · 222 页

青空文庫

お経のすんだあと、

いやさらに寂しかるらむ馬道の

馬楽の家の春の暮るれば

と吉井勇先生の狂馬楽の短歌を、文弥君が宮之助君の絃で朗詠しだした。短歌はみんなで五つあった。その五つの歌と歌との間へ、新内流しが、騒ぎ唄が、下座囃子が、雪の合方が、心憎いまで巧緻に採り入れられて弾かれた。吉井先生の「俳諧亭句楽」「狂芸人」以下一連の市井戯曲を読んだことのある人たちは記憶しているだろう、あの狂死せる三代目蝶花楼馬楽(本名を本間弥太郎といったので、人呼んで弥太ッ平馬楽)の二十八回忌。一月十六日の祥月命日をお彼岸の今日に延ばして、私は師、吉井勇先生の代参に今年で七年、月詣りをしているところから馬楽はその五代目の名跡を襲っているところから、ともにこの法会を営んだのだった。馬道に、また富士横町に住んでいた狂馬楽は「註文帖」や「今戸心中」時代の吉原で、寄席へゆかない日夜の大半を生活していた。「夜の雪せめて玉丈けとゞけたい」は、この間の心境を痛切にうたった弥太ッ平馬楽の告白といえよう。すなわちその姿をば文弥君は、三下がりの騒ぎ唄の中に世にもクッキリと描いたのだった。うつらうつらと目を閉じて聞いていた私の目から、騒ぎ唄の弾かれたとたん、急におびただしい涙がはふり落ちてきた。