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ずいひつ よせばやし

寄席囃子 正岡容寄席随筆集

正岡 容

正岡容『寄席囃子 正岡容寄席随筆集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:随筆 寄席囃子、艶色落語講談鑑賞、随筆 寄席風俗、寄席行灯、わが寄席青春録。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,259 字 · 222 页

青空文庫

へ、立花家橘之助その人の名で、年少の日の私が稚拙の筆を駆り立てて多分一、二回連載で書かせてもらっている。元よりその雑誌、もう私自身も持っているよしもないのであるが――。

それにしても橘之助、あれほどの一種の女傑でありながら色ざんげらしいことは毛ほども喋ろうとしなかった。まだこっちがてんで子供だったせいもあろうが、前掲した博文公との話でもかつて石谷華堤さんに話したら公との情話らしく扱われてまことに困ったなどと大真面目で語っていたことを思う時、別な橘之助の一面をそこに見せられた気がしてならない。ところで橘之助はこの左門町へ移る前は、やはり薬研堀の路地の清元の女師匠の二階を借りて住んでいた。そうしてそこの二階のある日の景色もまたそっくりそのまま、私は震災の春、世に問うた「影絵は踊る」という未熟な長篇小説の中へ写し出している。

このようにして考えてみると立花家橘之助と私との縁の絲はなかなかに深く、そういえばその「影絵は踊る」の女主人公も橘之助門下の某女だったし、橘之助と艶名を謳われた三遊亭圓馬(その頃のむらく)が私の師父にあたっているし、さらに私と多年の交わりがあり、それゆえに昨春、七世橘家圓太郎を襲名させた新鋭はたまたま橘之助最後の夫たる先代圓の門人。