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ずいひつ よせばやし
寄席囃子 正岡容寄席随筆集
正岡 容
正岡容『寄席囃子 正岡容寄席随筆集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:随筆 寄席囃子、艶色落語講談鑑賞、随筆 寄席風俗、寄席行灯、わが寄席青春録。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,259 字 · 222 页
大岡山の寄席では、席亭である大兵肥満の一立斎文晁なる老講談師も一席、力士伝を助演した。今考えると、名人文慶の門派だったにちがいない。大森の弥生館、神田お成道の祇園、山吹町の八千代クラブ、その他、本所にも深川にも未知の寄席がじつに多くて浪曲をかけていた。あんなにたくさん席があったから、青年浪曲家は毎夜連続長篇の勉強ができ、腕も上がったわけである。それが今日では旅が多くて、一カ所を二日も打てば精一杯ゆえ、若手は二席も受ける読み物があれば事が足りるのは情ない。従って、語る(描写)はずの浪曲が、だんだん歌うだけの歌謡まがいに堕落していく。第一、指導者たるべき作者側に、自ら宇田王介(歌はうかい)の洒落の筆名の御人が存する以上、浪曲が「非芸」になっていっても仕方があるまい。
しかし、何といっても昭和初頭から事変以前までの浪曲と落語との無縁さ加減には、今昔の感に堪えないものがある。落語家は浪曲を場違いとばかり一蹴し、浪曲師はまた博徒のような気質が日常座臥に殺伐にのこって孤立していた。滑稽軽妙な先代重松は門人に始終落語を聴けと言っていたそうだし、同じく飄逸な至芸だったと聞く先代浪華軒〆友は八代目林家正蔵君とも盟友だった由であるが、他は多く犬猿の仲でないまでも、犬と猫ぐらいの不仲ではたしかにあった。