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ずいひつ よせばやし
寄席囃子 正岡容寄席随筆集
正岡 容
正岡容『寄席囃子 正岡容寄席随筆集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:随筆 寄席囃子、艶色落語講談鑑賞、随筆 寄席風俗、寄席行灯、わが寄席青春録。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,259 字 · 222 页
いよいよ今日にして彼らの高座に触れておかなかった悔いが深い。
浜町河岸箱丁殺しの花井於梅が寄席へ出たのはいつ頃だろうか。私の子供の時分(明治末)には、吉沢商会の活動写真(もちろん、今日でいうところの劇映画)へ登場していた。さる老落語家の手記によると、於梅は寄席では主に手踊りなど見せていたらしいが、衰残の大姥桜、せっかくの踊りも脂気が抜けてただいたましく寄席もひと廻り巡演しただけで好評再演というわけにはいかず、最後は郡部の寄席へまで看板を曝した、とある。とすると彼女の映画入りは、この寄席出演失敗以後のことだったのだろうか。
花井於梅が蜂吉を殺した明治中世にはわが国の裁判ももうよほど進歩していたから大岡育造や角田真平(竹冷)が弁護してやり、従って命まっとうして苦役後、娑婆へも出られたわけだが、明治初年においてもまた一審で断罪ということなく自由に控訴ができたなら、かの高橋お伝も夜嵐お絹もいたずらに首斬浅右衛門の御厄介にばかりならないで命めでたく、それぞれ寄席の高座へ、残菊の花香を匂わせたことだったろう。ましてお絹は当初、鈴川小春と名乗って日本手品の名花一輪、滝の白糸のごとき水芸その他を、江戸末年の各席において常に上演していたにおいておや。