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ずいひつ よせばやし

寄席囃子 正岡容寄席随筆集

正岡 容

正岡容『寄席囃子 正岡容寄席随筆集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:随筆 寄席囃子、艶色落語講談鑑賞、随筆 寄席風俗、寄席行灯、わが寄席青春録。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,259 字 · 222 页

青空文庫

昼席

――昼席ほど、しみじみ市井にいる心もちを、なつかしく身にしみ渡らせるものはない。

そういっても、震災前の旧東京には、まだ昼席にふさわしい、旧びた木づくりと、ちょっと小意気で古風な庭とをもったいろものの寄席があった。――新石町の立花なんぞは、そういっても、夜席より、昼間がよかった。あのだだ長く薄暗い寄席の片すみ、万惣の果物をかぞえる声が、荷揚げの唄のように何ともいえず、哀しくひびいてくるのを背にしながら、守宮のように板戸に倚りかかって聞いている時、いつも世の中は、時雨ふる日の、さびしく、つつましい曇天だった――。冬の日の独演会の四席めには、そぞろ、高座が暗くなって、故人圓蔵のうら長い顔が、みいらのように黒くなった。私は、ひとしお、ひしと火桶を身に引き寄せては「野瀬の黒札、寄席の引き札、湯やの半札」と、可笑しき「安産」のとりあげ婆が、果てしなき札づくしを、そんな時、何にも換えがたく聞き入るのだった。そういえば、研究会の創立十六年記念演芸会(その時の番組はまだ手元にある! 大正九年四月の第四日曜で、圓蔵の「百人坊主」に山帰来の実が紅かった。