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ふじ

富士

岡本 かの子

「文芸」1940(昭和15)年11月号~1941(昭和16)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,579 字 · 82 页

青空文庫

そのおのおのには、内側のものと外側のものとの脈帯の襞が違っている。それすら、複雑蟠纏を極めているのに、下より突き上げ上から展し重なるよう、十一の火山脈が縦横に走る。

かくて、この島山は、潮の海から蜻蛉型に島山の肩を出すことが出来たのであった。重ね重ねの母胎の苦労である。その上、重く堅い巌を火の力により劈き、山形にわたくしを積み上げさせたということは、仇おろそかのすさびに出来る仕事ではない。非情の自然が、自らその頑な固定性に飽いて、抗い出た自己嫌悪の旗印か、または非生の自然に却って生けるものより以上の意志があって、それを生けるものに告げようとする必死の象徴ででもあるのであろうか。

あるべきもののある理由は、そのものになり切ったものにしてはじめて頷けるほど、深刻なものであるのであった。山一つさえその通り――

「まだそのときのわたくしは、きしゃな細火を背骨にし、べよべよ撓るほどの溶岩を一重の肋骨として周りに持ち、島山の中央の断れ目から島地の上へ平たく膨れ上っただけの山でした」

世の中は、ただうとうとと、あま葛の甘さに感じられた。ただひとりぽっちが寂しかった。