轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ふじ
富士
岡本 かの子
「文芸」1940(昭和15)年11月号~1941(昭和16)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,579 字 · 82 页
翁はその多くのこどもを西国の名だたる山に、ほぼ間配りつけた。比叡、愛宕、葛城、鈴鹿、大江山――当時はその名さえ無かったのだが、便利のため後世の名で呼んで置く――山ほどの山で翁のこどもの棲付かぬ山もなかった。
山に冥通を得たこどもたちは、意識に於て「妙」というほどの自在を得た。離れたときには山と自分と相対した二つとなり、融ずるときには自分を山となし、或は山を自分とする一致ができた。山におのおの特殊の性格があることは前の条で説いた。こどもたちは育った山の性その如き人間となった。身体つき容貌まで何やら山の姿、峯の俤に似通って見えた。西国の山は冬は脱ぎ夏は緑を装った。こどもたちも亦冬は裸に夏は藤ごろもを着た。緑の葉に混る藤の花房が風にゆらいで着ものから紫の雫を撥ねさした。
もとより山のことにかけては何事でも暗んじているこどもを、麓の土民たちはその山の神と呼んだ。そして侍き崇むる外に山に就ての知識を授けて貰った。たつきの業を山からかずけられて生活する麓の土民は、山の秘密や消息を苦もなく明す人間を、感謝し、惧れ、また親しんだ。ときどきは神秘に属する無理な人間の願事をも土民はこどもに山へ取次ぐよう頼んだ。