轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ふじ
富士
岡本 かの子
「文芸」1940(昭和15)年11月号~1941(昭和16)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,579 字 · 82 页
あなやの間ではあるが、消えてはまた生まれ、あちらと思えばこちら、連続と隠顕と、ひととき眼を忙失させるけれども、なお眼を放たないなら、眺め入るものに有限の意識を泡にして、何か永遠に通じさすところがある。ふつふつ、ふつふつ。仰げばすでに、はっきり覚めて、朝化粧、振威の肩を朝風に弄らせている大空の富士は真の青春を味うものの落着いた微笑を啓示している。
男は今度、女が来たとき
「数は数え終えたよ」と微笑した。
しかし、女はなお、男を試みて
「夕な夕な山を越して来る、鳥の数を数えなさったら」
といった。
男は秋の夕山を仰いで、渡り来る鳥群に眼をつけた。
陽が西に沈むにつれ山は裾から濃紫に染め上って行く、華やかにも寂しい背光に、みるみる山は張りを弛めて、黒ずみ眠って行く。なお残る茜の空に一むれ過ぎて、また一むれ粉末のまだら。無関心の高い峯の上を、その鳥群のまだらだけが愛を湛えて、哀しい大空にあたたかい味を運んで行く。
今度女が来たとき男はいった。
「あの山を越す哀しい鳥の数も数え尽した」
「もう、いいわ、じゃ、ね」
さぬらくは玉の緒ばかり恋ふらくは不二の高嶺の鳴沢のごと