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てらだとらひこのついそう

寺田寅彦の追想

中谷 宇吉郎

「寺田寅彦の追想」甲文社、1947(昭和22)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,683 字 · 40 页

青空文庫

制度の上では寺田研究室という新しい研究室が出来、長岡研究室、西川研究室、高嶺研究室その他の前からあった物理方面の研究室と並んでいたが、実際は人員からいっても、先生と私と、あと小学校を出たばかりの山本君という若い人と三人だけの小さい研究室であった。前からあった研究室は三号館という物理専門の建物にあったが、寺田研究室だけは、二号館という本部と工科方面の研究室とのある新しい大きいコンクリートの建物の中に割り込んでいた。部屋は二階に先生の居室があり、下に私と山本君とがいる実験室があっただけである。設備がまだ全然無いので、とても急に其処で実験を始めるというわけには行かないので、夏休までは、大学の旧の実験室で仕事をつづけ、その間にぼつぼつ器械を買い集めたり、実験室の装備をととのえたりすることになった。

球皮の実験は、航空船爆破の原因探究としては、一応任務を果したわけであるが、その特異な電気的性質は、そういう問題をはなれて、純物理学の問題としても、非常に面白いものであった。というのは、このアルミニウム・ドープというのは、アルミの粉を塗料にまぜたもので、電気の良導体の粉末が絶縁物の中に沢山雑ったという特殊な材料である。