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ちいさいこども

小さい子供

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,487 字 · 7 页

青空文庫

「又彼のお婆さんの所へ腰かけて行きましょう。

等と話しながら、温室の前に出ると黄ばんだ芝生の何とも云えず落着きのある色と確かな常磐木の緑、気持の好い縞目を作って其の影を落して居る裸の木の枝々の連り等が、かなり長い間此那所へ来ないで居た私の目に喫驚する位嬉しく写りました。

私に手を引かれて立ち止まって大きい目をクルクルさせて四辺を眺めて居た彼は如何にも感に堪えない様な調子で、

随分静かだいね、

悪戯っ子も居ないで好い。

と云った顔には明かに今まで一度も見た事のない非常に人気なく拡がった景色に対する驚異の興奮が現われて居ました。

まるで見覚えのない始めての世界へ連れ出された様な気持で、何か変の有った時にはまだ年の若い腕力の弱い姉一人を保護者として置いては不安だと云う様な事をぼんやりとながら思って居たものと見えてしきりに、

「悪戯っ子が居ないで好い。

と云う言葉を繰返して居ました。

彼の温室の前の方へ立ってズーッと彼方を見渡すと、多勢の人が歩き廻って居る時には左程にも思いませんけれ共、木の梢も痩せ草も末枯れて居ておまけに人っ子一人居ないのですからもうそりゃあそりゃあ広くはるかに見えます。