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ちいさきいえのせいかつ
小さき家の生活
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第十五巻」河出書房、1953(昭和28)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,540 字 · 18 页
武岳と云う医者の横と、葉茶屋の横との、三尺ばかりの曲り口も、如何にも貧弱に、裏店と云う感じを与える。
木戸が開いて居るので、庭へ廻り、ささくれた廊下や、赤土で、かさかさな庭を見、此が自分の家になるのかと、怪しいような心持さえした。
H町に暮して居た種々な、ややアリストクラットな趣味や脆弱さが抜けて居ないので、自分は、静に生活を冥想する場合には、予想し得ないような、階級の差別感に打たれたのであった。
いきなり格子を開けると玄関になるのを妙に思い、当惑したような微笑を漂せ乍ら、本棚の並んだ八畳を見た。
Aは、重い棚を動かし乍ら
「どう? 気に入りますか?」
と訊いた。彼の姿を見、自分は、種々なこだわりを忘れて
「結構じゃあないの?」
と云った。
「まだ馴れないから変だけれども、段々よくなるでしょう」
「随分、よく日が当りますね。H町より乾いて、お涼しゅうございましょう」
まつが、雑巾を持ち乍ら、庭を見る。成程、気がつかなかったら家は西向で、午後になると、日が、真正面から座敷一杯に差し込むのである。
困ったことだ、と思った。自分は、ひどく眩ゆいのを嫌う。どうするか、と案じた。