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ちいさきなにも
小さき花にも
豊島 与志雄
「光」1948(昭和23)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,115 字 · 21 页
期日などは少しも守らないことで有名な先生だ。そんな先生ほど私にとっては却って楽なのである。
先生は不在だった。近くの飲み屋に行ってるとのこと。そちらへ伺った。
先生は酒を飲んでいた。三人ほどお友達といっしょだった。開け放しのとっつきの室だ。私が名刺を出して、原稿のことを話すのを、先生は黙って開いていたが、突然言った。
「ふしぎだ。君はよく似ている。姉さんか妹さんか、雑誌社に勤めてるひとがいるだろう。いや、ふたごかな。そっくりだよ。」
私が先生のところへ来たのは二度目である。初めの時は、先生はそんなことを言わなかった。
「ふたごでない、姉さんも妹さんも勤めていないと、ほんとかね。だが実によく似てる。そっくりだ。誰が見たって間違える。」
私はへんな気になった。言われるまま、室の隅っこに上りこんだ。
「ね、似てるだろう。」と先生はお友達に言う。
「誰にだい。」
「さあ、名前は忘れたが、やはり雑誌社のひとだ。なんといったかな……。」
先生は眉根を寄せて考えこみ、それからまた酒を飲みだした。私は雑誌の原稿のことを繰り返し頼んだ。
「明後日の朝までに頂きませんと、たいへん困りますの。