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こじまのはる
小島の春
下村 海南
02 序
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,161 字 · 3 页
て見たのである。
僕の昭和九年の旧著「遍路」は四国路の旅行記であり、その中には癩についてかなり筆にしてある。又沿道所在の講演にも癩につき言及した事が少なくない。著者の救癩記を読んで一入感無量である。療養所、そんな恐ろしいところへはと首を振る患者、どうか引取って頂きたいと嬉し涙にくるる患者。そうした患者たちと何んの懸念もなく手を握りあってる村人。そうした中に、さていよいよ療養所へ引取られる生別離苦の痛々しい場面は、只空の想像しただけでは傷心のかぎりである。
土佐日記はいにしえ土佐の国府から都へと旅した紀貫之の「土佐日記」もある。今土佐の山間に不幸なる患者への救いの手をのばす小川正子の「土佐の秋」もある。僕は短歌の方に足を踏み入れているからいうのでは無いが、此作品は著者の血と涙に滲んでる筆先に、歌が彩られている事により得もいわれぬ暖かな懐かしさ、或るなごやかな気分を味い知るは嬉しくもあり、有りがたい事と思う。
ここにたまたま十月の二十一日、東都神田にてMTLが主催された「非常時下の救癩問題座談会」を終えて帰えりし朝風荘の書斎に、内田守君の飛信をうけ、小川女史が光田園長救癩四十年の記念にと捧げる、此書に序文を筆にする事も奇しき因縁である。