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こゆびいっぽんのおおじあい

小指一本の大試合

山中 峯太郎

「少年倶楽部」講談社、1931(昭和6)年1月号

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,932 字 · 13 页

青空文庫

さあブルのらんぼうがはじまるぞ! と、みんなが青くなった。ちょうど食堂にいたときだ。中には焼き肉を半分、食いかけたままで、コソコソと逃げだしたものもいる。ぼくは、このとき、すみの方で、ジャガイモを食いかけていた。

「なにって、前の月の洗濯代が、まだいただかずにあるんです。ぼくが主人にさいそくされて、こまってるんですから、どうかおはらいください、ポールさん」と、ジョージがブルに、ていねいにいってる。

「ハッハッハッ」と、ブルが、わらったかと思うと、いきなりどなりだした。

「ヤイ、ジョージ! きさまはおれに、恥をかかせたな、みんなの前で、さいそくなんかしやがって、こい! もすこし前へこい!」

「いや、恥をかかせるなんて、そんなことが、あるもんですか。みんなの前でとおっしゃっても、ここの倶楽部の方ばかりで、みなさんは仲のいい兄弟のような方じゃありませんか」と、ジョージが、やさしくいうと、

「だまれッ! なにが兄弟だ。きさままでおれに反対するかッ」

と、いきなりブルが立ち上がった、と思うと、ジョージにとびかかっていった。ジョージもおこった。ものもいわずにブルへ打ってかかる。