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こゆびいっぽんのおおじあい

小指一本の大試合

山中 峯太郎

「少年倶楽部」講談社、1931(昭和6)年1月号

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,932 字 · 13 页

青空文庫

このフランクが、ぼくの部屋へきて、ほんとうにこまってる顔をしながら、

「内村君、ブルが下宿代をはらわないんだ。しかし、追い出すといったりしたら、それこそたいへんだしね。どうしたものだろう?」と、相談しだした。

「さあ、拳闘の第一選手だというんだから、いばらしておくさ」と、ぼくは、ブルなんかなんとも思ってない。すると、

「ただいばるだけならいいが、ブルがいるので、倶楽部を出ていくものもあるしね、なんとかならないものだろうか?」と、倶楽部長フランクが小声でいう。

「なんとかならないものかって、どうするんだ?」と、きいてみると、

「きみはこの前、ブルが洗濯屋のジョージを、たたきつけたときに、一人でジャガイモを食ってたそうだね、ほんとうかい?」と、また、たずねる。

「ウン、食ってたよ、うまかった」

「フウム、すると、ほんとうだね。それがみんなの評判になってるんだが、きみは、いったい、ブルがこわかないのかい」

「べつにこわかないね」

「ホウ、すると、どうだろう? きみとブルと試合したら、どっちが勝つと思うね? 内村君」

「それあ、やってみないとわからないさ。しかし、まず負けることはあるまいね」