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こむらたんさい

小村淡彩

宮本 百合子

「女性」1926(大正15)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,488 字 · 23 页

青空文庫

引込んでいた亭主が出て来た。

「――仕様がないじゃねえか、あんな奴を背負い込んで……」

「始めっから判ってりゃ誰も置かないよ」

「疎いなあお前も、女のくせにして、わからないのか様子で」

いしは、馬鹿にしたように亭主を見た。

「――夫婦喧嘩したって仕様がないじゃあないか、いい年をして何だね。あの駐在め、目をつけたからこれでまた当分五月蠅いや」

いしは、頻りに何か考えていたが、午後手がすくと、せきを呼んだ。

「一寸すまないが××寺へ行って、権さんてのをつれてきとくれな」

「そんな男に何用があるんだ」

「まあ、まかしておくれ、わるいようにはしないから……仕様がない、おろくと一緒にするのさ」

「一緒にするたって、荷物つきだぞ」

「…………」

権は、飛び出た眼を不安そうに突き出して直ぐ来た。せきから、今朝の始末を聞いたと見え、彼は、恐縮そうに縞の着物の膝を畳んで挨拶した。

「よく来ておくんなすったね。少し話があるから――じゃ奥へ行きましょうか」

せきが、茄子の煮たのと酒とを運んだ。一時間ばかりすると、いしの機嫌のいい大声が聞えた。

「おろくどん! 一寸」

おろくは、台処にい、声をきくと却って手脚をすくめた。