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しょうせいのあけくれ
小生のあけくれ
北大路 魯山人
「春夏秋冬 料理天国」1959(昭和34)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,466 字 · 3 页
毎日自家の湯に第一番に入る。湯から出れば間髪を入れずビールの小壜を数本痛飲する。無人境に近い山中の一軒家においてである。目に見るものは、虚飾のない自然のままの山野であり、家の中は最高に近い古美術品である。他は、犬であり、猫である。にわとりもいる、鴨もいる。野鳥はのびのびと遊んでいる。このように、小生の周辺には小生の健康を害するようなものはなに一つない。小生の健康はこんなところから作り出されているのかも知れない。
もちろん、親なく、子なく、妻もない孤独生活である。これも世間には類がないかも知れない。小生に勝手気儘な自由ができるゆえんのものは、小生を束縛するものが皆無であるからだろう。親兄弟や妻子があっては、なんとしても妥協生活を免がれないだろう。
ヤセ浪人では家族全部が好むところに従うわけにもゆくまい。自分ばかり好むままの生活、好むままの食事にひたりきることもできまい。
そこへゆくと、野獣、山禽の生活は、人間よりはいかほど自由を享楽しているか分らない。人間のように病気もないであろう。
山鳥のように素直でありたい。太陽が上がって目覚め、日が沈んで眠る山鳥のように……。