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こいわいのいっか

小祝の一家

宮本 百合子

「文芸」1934(昭和9)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,193 字 · 31 页

青空文庫

三十年来、貧乏をしつづけながら、祖父ちゃんは自分ひとりでは飯もたけないままを押しとおしてどうやら勇も小学を出し今日まで暮して来た。いつか勉が、祖父ちゃんは祖母ちゃんで持っているのだと云った。こういう場合に、乙女は祖母ちゃんのその一生懸命な気働きを感じるのであった。

数日の間、乙女は「すずらん」の緑や赤の埃っぽい色電気の下でも、ふと「放蕩かね?」「――まあそんなようなものでございます」という二つの声をまざまざと思い起した。だが一度、一度と思い起すたびに、それに絡んでくる乙女の感情は複雑になった。

勉が放蕩をするような男とは反対の性の男であることが、おまわりとの会話を何とも云えずおかしく妻としての乙女には寧ろ愉快にさえ感じさせたのだが、勉のその確かりした気質について真面目に思いすすめると、乙女は自分と勉とのつながりについてこれまでになく深いものを感じた。

急な情勢の必要から、勉は乙女があれこれ考える暇もなくよそに住むようになった。勉は放蕩から自分をすてる男でない。今まではそこまでしか考えのうちになかった。が、自分が運動についてゆけなければ勉は自分を妻にしては置かないであろう。