轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しょうせつ えんちょう

小説 圓朝

正岡 容

正岡容『小説 圓朝』。同一底本的分册已合并为一书。收入:小説 円朝、我が円朝研究、小説 円朝 あとがき。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,270 字 · 325 页

青空文庫

そう、まさにそれに違いない。

……そのように考えたとき次郎吉は、にわかに父圓太郎がよく高座でつかう十七文字がゆくりなくもおもいだされてきた。

エーエーとあれは、む、む……む……そうだ、「武玉川」だ、たしかそういう発句の本だっけ、その中の句を引事にしちゃ、阿父さんこういったんだっけ、

「この蜆、壁で死ぬとはおもうまい」って。

あの時分は何の気なしに聞き流していたけれど、今になると思い当るいい句だ、たしかに。

「壁で死ぬとはおもうまい」か。

その通り、その通り。

とするとこの俺はさしずめ蜆か。

ウム、いかにも俺、小っこくて江戸前だから、業平蜆ってところだろう。

……ふッといま次郎吉の心に、青々と水美しくこがれている業平あたりの春景色が、広重えがく江戸名所絵のよう蘇ってきた。

早春の空あくまで青く、若草萌えている土手の下、そこにもここにも目笊片手の蜆取りの姿が世にも鮮やかに見えてきた。

臥龍梅から小村井かけて、土手ゆく梅見客も三々五々と目をよぎった。どの男も、どの女もみんな瓢箪を首にかけ、ホンノリ頬を染めていた。

……しかもその景色は、こうした寺方の墨一色の世界とは比ぶべくもなく多幸な多彩なこの世ながらの大歓楽境のようおもわれないわけにはゆかなかった。