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しょうせつ えんちょう

小説 圓朝

正岡 容

正岡容『小説 圓朝』。同一底本的分册已合并为一书。收入:小説 円朝、我が円朝研究、小説 円朝 あとがき。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,270 字 · 325 页

青空文庫

に、次から次へと描き上げていった。

次から次といっても、もちろん、そう短兵急にはゆかない。これもやっぱり乾きを待って(雨でもつづくと何とそのまた乾きが遅かった!)次々と塗り上げてゆくのでなければならなかった。三日で上がるのも、五日で上がるのもあった。十日かかってまだ出来上がらないものもあった。

全部の景色がすっかり仕上がってしまったのはかれこれ、八月。もう裏のすみだ川の水のいろが、めっきり秋らしく澄みだしていた。

あくる日から圓朝の家は三たび態を変えて、今度は花やかな三味線の音締が絶えず聞かれるようになった。大太鼓、小太鼓、ドラ、つけや拍子木の音も面白可笑しく聞こえてきた。

三味線のほうは下座のお辰婆さんの詰めっきりで、鳴物一切は萬朝が一生懸命、かかりっきりになってやっているのだった。

その合方に乗って圓朝の、あるいは高く、あるいは低く、あるいは男の、あるいは女の、台詞めいた声音が聞こえてきた。

誰の声いろも使えないらしく、誰の口跡にも似ていなかったけれど、芝居の台詞であることはすぐ分った。

これがひと月ふた月とつづいた。

やがて十一月――。

ようやく圓朝は前人未踏の鳴物噺というものを、高座へのせた。