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しょうせつのせんをおえて

小説の選を終えて

宮本 百合子

「文芸評論」1934(昭和9)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,513 字 · 4 页

青空文庫

必しも咎めることは出来ないが、現実を周到に観察し、それぞれをなるたけ正確に、活々と表現しようと努力してゆけば、自然とそういう欠点はなおるであろうと思う。

終りの印象的にとらえられている場面は書きかたをもっと煩雑でなくするとズッと活きて来る。以上の点を考慮に入れ、予選作品の中では、まとまっている方であると思った。

「製本職工の創った小説」  谷英三

この作は、はじめ筆をおろすときに、小説の終りの部分(つまり職場仲間がやられたのにただ手をつかねて見ているばかりであった製本工場内の実際の有様)までを一貫してハッキリ見とおし、そこへ来るまでのいろんな出来ごとを、その主な骨に結びつけて活かすように書いたら、きっと面白いものになっただろうと思う。作者はただ、あれの次このこと、このことの次に斯うなったと、ぼんやり事に追われて、並べている。元気のいい、若い調子は結構だけれども、この作ではすこし調子に、のりすぎていると云えないこともない。職場のひとらしい独特の味もあるのだから、いそがず又次々に実際生活での経験をじっくり作品にして行ったらいいと思う。

「開墾仲間寅公」  猪狩満直