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しょうせつしゅう「はくとうのうた」こうき
小説集「白塔の歌」後記
豊島 与志雄
「白塔の歌 ――近代伝説――」弘文堂、1941(昭和16)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 867 字 · 2 页
ただ作者は一種の関心と愛情とを以て夢みた。この夢がいくらかでも民族的な拡がりを持つようにと、希うだけである。
そういう作品であるから、細かな事物について、或は風俗習慣などについて、誤ってる点もあろうと思われる。作者は種々の事実の調査よりも寧ろ、人物の性格を掴むことに忙しかった。そしてそれらの性格に超越的な点があるとすれば、作者があまりに夢を楽しみすぎたからであろう。そして作品が超現実的になっている点があるとすれば、作者があまりに象徴的に物を考えたからであろう。いろいろの人物が死んだり行方不明になったりするのも、その時とその事柄とについてのその人物の存在的退場を意味するにすぎない。――だが、それらのことはとにかく、読者がただ面白く読んで愉しく夢みることの出来るものがもしもあるならば、それだけで満足したいとも、作者は考えるのである。