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しょうねんとうみ
少年と海
加能 作次郎
「赤い鳥」1920(大正9)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,808 字 · 10 页
と思わず叫びました。ぬらっとして、油をまいたような平かな海面がくずれて、一体に動揺を始めたようでした。入江の出口から右の方に長く続いている小が崎の端が突き出ている、その先きの小島に波が白く砕け始めるようになって来ました。鴎が七八羽、いつの間にか飛んで来て、岬の端に啼きながら群れ飛んでいました。ずっと沖の方が黝んで来ました。生温い風が一陣さっと為吉の顔をなでました。
一心に沖を見ていた為吉は、ふと心づいてあたりを見廻しました。浜には矢張り誰もいませんでした。何の物音もなく、村全体は、深い昼寝の夢にふけっているようでした。鳶が一羽ものものしげに低く浜の方に翔っていました。
為吉はまた沖を眺めました。白山は益々はっきりして来ました。さっきの白帆が大分大きくなって、しまきが沖の方からだんだんこちらに近づいて来ました。あのしまきがこの海岸に達すると、もう本物の南東風だ、もう、それも十分と間がない、――白山、南東風、難破船、溺死――、こういう考がごっちゃになって為吉の頭の中を往来しました。誰か死ぬというような思が、ひらめくように起りました。胸が何物かに引きしめられて、息苦しいような気さえして来ました。