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しょうねんのし

少年の死

豊島 与志雄

「新潮」1916(大正5)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,400 字 · 27 页

青空文庫

庄吉は唇に杯を持ってゆくその女の少し下品な険のある横顔を眺めていた。

「お前さん大変怜悧だってね。」と彼女は庄吉の方を向いて云った。

「なにね、悪いことばかりに賢こくて始末に終えないのさ。」と小母さんは遠慮もなく云ってのけた。

「それはね子供のうちはどうせ悪戯ばかりしたがるもんですよ。でも屹度いい大工になるでしょうよ。棟梁もそう云っていましたよ。」

「あらお前さん棟梁に逢ったの?」と小母さんは不思議そうに眼を丸くした。

「いえね。」と云って彼女は一寸言葉を切ったが、「こないだ一寸お寄りなしたから。」

「あそこへかい。」

「ええそうよ。」

小母さんはじっと彼女の顔を窺っていたが、それから金さんの方をじろりと見た。

「俺も少しお前の処へ遊びに行くかな。」と金さんは云った。「まさか振るようなこともあるまいね。」

「あらいやだね、兄さんは。」と云って彼女は蓮っぱな笑いを洩らした。

金さんはもうすっかり酔っていた。そしていつしか畳の上にごろりと横になって鼾をかき出した。

「これだから困るのよ。」

「そうね。」と彼女も云った。

それから小母さんは、金さんが酒ばかり飲んで困ることや、家の中の経済の困難なことなどをくどくどと彼女に訴えていた。