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しょうねんのし
少年の死
豊島 与志雄
「新潮」1916(大正5)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,400 字 · 27 页
小母さんも彼の方をじろりと見返した。
庄吉はいつしか新らしい隠れ場所を見出した。家は南に通りがあって西向きに建てられていた。そして通りから奥に勝手と便所とが並んで在った。便所の方は隣家の垣根に接して、その間に僅かに身を入れる位の余地があった。水道の共同栓の広場から木戸があって其処に通じていた。庄吉は隣家の裏口を廻って、いつも締りがしてないその木戸を押して中に入った。そして便所の側に蹲んだ。其処から家の中の話がよく聞えた。そしてまたその狭い空地をすかして表の通りの方も覗かれた。
庄吉は屡々長い間其処に身を潜めた。人しれぬ小さな穴から、世間の裏を覗いてるような、また自分の運命を見守っているような好奇な楽しみが、彼の心を唆った。
庄吉は其処から、みよちゃんの小さな足先をじっと見ることもあった。また家の中の話をきき取ることもあった。
「庄吉はもうどうにかしなけりゃいけないよ。」と小母さんはよく云った。
「なに小僧じゃないか。」と金さんは云った。
「小僧でいてあれだから恐ろしいんだよ。始終人の隙を狙ってるような眼附をしてるじゃないか。私もうあれを見ると身震いがするようだ。