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おぜのむかしといま
尾瀬の昔と今
木暮 理太郎
「登山とスキー」1936(昭和11)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,599 字 · 15 页
其後大正九年七月久振りで尾瀬ヶ原を過ぎ、十三年の秋尾瀬沼に遊び、昭和十年の春また十一年振りで尾瀬沼、尾瀬ヶ原、三条瀑を見物し、燧と至仏とに登って藤原に出た。そして尾瀬の風光がいつも昔と変らぬ自然の儘の姿であることに大きな喜びを感ずると共に、魚釣りや蕨取りの見窄らしい小屋に雨露を凌いだことのある身には、改築された長蔵小屋などは、名は小屋でも実は旅館の程度であるのを勿体なく思った。檜枝岐小屋の隣りへも二階屋の新築中であった。この二だけでも用は足りるのに、尾瀬ヶ原には、温泉宿もあれば、水電の小屋もあり、山ノ鼻の小屋もある、全く泊るにこと欠くような憂はなくなった。昨年尾瀬に来遊した人の数は三千人であると聞いて、成程と首肯かれた。
路は分りよくはなった、それでもまだ綫の如き細径が原の中をそれかと許り遥々と続いて、倒木を其儘橋代りに川を渡るなど、昔とさして変りはないが、尾瀬から一歩踏み出すと交通の便利になったことは驚嘆に値する。高平、追貝、鎌田と年々に延びて止まなかった自動車道が昨年は古中まで通じた。本年あたりは粘沢合流点の大清水の小屋まで通ずるとの事だった、これは粘沢に金鉱とかが発見された為であると聞いて、若し此鉱山が足尾のように盛大になって附近が坊主山となり、高い煙突から吐き出す毒煙が燧の原始林を枯死させるよう