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びょうぶはたたまれた

屏風はたたまれた

山本 周五郎

「文藝春秋」文藝春秋新社、1957(昭和32)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,953 字 · 24 页

青空文庫

と云った。その女中は訝しそうに、自分がいちばん古くからいるので、そんな約束があれば自分が知らないわけはない。だが念のため帳場で訊いてみるが、お名前はなんというのかと云った。弥十郎は「ゆき」という名と、これまでに七たびも来ているということを告げた。――その女中はやはり腑におちない顔で、それでも奥へ訊きにいったが、まもなく五十がらみの、女主人とみえる肥えた女と、ほかに三人の若い女中がいっしょに出て来た。

「わたくしがあるじのすみでございます」と女主人が鄭重に云った、「いまこのお秋からお話をうかがいましたが、うちをお間違えになったのではございませんか、てまえどもではゆきと仰しゃるお客さまは存じあげませんし、今日、座敷のお約束などもうかがっておりませんですけれど」

そして、若い三人の女中たちに、この方を知っているかと訊いた。女中たちはみな知らないと答えたし、弥十郎にも覚えのない顔ばかりであった。彼は悪い冗談だと思い、今日ここで千夜と逢う約束になっていること、千夜がそれを云い置かなかったかもしれないが、たしかに来ると思うことなどを話し、どんな部屋でもいいからそれまで待たせてもらいたい、と頼んだ。