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やまのかなたは
山の彼方は
宮本 百合子
常識とはどういうものだろう
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,798 字 · 14 页
恋愛の心持を経験していない若い婦人が、観念の中で考えても結婚ということがまだ本当にわかっていないというのは素直な言葉であると思う。わからないということは、私どもにすらりと受けとられるし、一種の好感も覚える。けれども、わからないならわからないとして、どこまでも自分として納得できるまでわからないで通しているかといえばそうではなくて、半面ではごく常識的な結婚の幸福とか生活の安定とかいうことが、知らず知らずのうちに打算せられていて、親の眼鏡にかなったものなら安全だろうという結論がちゃんと気持の中にできている。両親の反対する結婚が必ず人間的な内容ですぐれたものだというようなことはもちろんいえないことである。経験に富んでいるということがすなわち人間的識見の高いということになっているような幸福な両親を持っている人ならともかく、その娘さんのいう場合では、ただ世の中のいろいろのことを知っているからという意味でいわれていた感じであった。もし真に人生のわかった人間をみる明のある両親であったならば、かえって結婚というようなことを自分たちまかせにして考えるような娘を悲しく思うのではなかろうか。