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やまへかえったやまがら

山へ帰ったやまがら

小川 未明

「愛育 7巻1号」1941(昭和16)年1月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,134 字 · 5 页

青空文庫

」

英ちゃんは細かな枝をとおして上を仰ぎました。

「英ちゃん、いた?」

兄さんは、かごを木の下に置いて、口笛を吹きました。けれど、やまがらは、きこえないふうをしています。英ちゃんは、はるか上のやまがらの方に向かって、できるだけ高く手を上げて、小さな指を出して見せました。しかし、やまがらは、もうそんなものには見向きもしませんでした。ただ、いままで知らなかった大きな自然の中で、なにを見ても珍しいので、忙しそうに動いて、すこしもじっとしていませんでした。

「兄さん、もう帰ろうよ。」と、英ちゃんが、悲しそうにいいました。

「晩になったら、帰るかもしれない。」と、兄さんは、まだやまがらの帰るのを信じているようでした。

「もう帰ってこないよ。お家がわからないもの。」

英ちゃんは、いくつもたこの上がっている、原の方をながめて、自分たちは、二度とあのやまがらを見ることがないだろうと思いました。

家へ帰って、かごの口を開けたまま、かごを軒下の柱にかけました。先刻まで、その中には、ほおの白い、胸毛のくり色をした、かわいいやまがらがいたのにと考えると、あんなに馴れていながら逃げたことが、夢としか思えません。