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あずさがわのじょうりゅう

山岳紀行文集 日本アルプス

小島 烏水

小島烏水『山岳紀行文集 日本アルプス』。同一底本的分册已合并为一书。收入:梓川の上流、上高地風景保護論、高山の雪、日本山岳景の特色、雪中富士登山記、雪の白峰、白峰山脈縦断記、谷より峰へ峰より谷へ、不尽の高根。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 138,795 字 · 274 页

青空文庫

にぴったりと静まる、宗義は銃を負って、岩から岩を殆んど四足の速さで、飛びながら追っかけたが、竟に遁がしてしまった、もっとも羚羊は跛足を引いていたから、たしかに銃丸が、足へ当ったろうとは後で言っていたが。

ここから仰いだ白峰の北岳は、峻急に聳えて、肩幅も、おもいの外広く、頂上は幾多のギザギザがありながら、大体において平ッたく切截したようになって、間の岳つづきの尾根から、抓み上げられたように、北方の天に捏ねられている、まるで麦酒の瓶を押し立てたようだと、高頭君は半ば恐怖を抱いて言った、その壮容は、殉教者や迷信者を作って、引き寄せるだけの価値があった、もう日は真ッ直ぐに照りつけるようになって、黄色の烈しい光線が、眼をチラチラさせる、未だ午前であったが、これからいよいよ北岳登りになるのだから、一行は高山植物の草原に足を投げ出して、塩のない、皮の固い結飯を喰い初めた、福神漬の菜に、茶代りの雪を噛んだが、喉がヒリつくので、米の味も何もなかった。それでも東に甲府平原と、それを隔てた富士山、西に伊那平を踏まえている木曾駒山脈、北の仙丈岳と駒ヶ岳、近くに北岳を仰いで、昼飯を済ました心持は、悪くはなかった。