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やまもとゆうぞうしのきょうち

山本有三氏の境地

宮本 百合子

「文芸」1937(昭和12)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,155 字 · 32 页

青空文庫

「田舎になんか行くとよくあるじゃないの。昔あすこんとこをあの河が流れていたんですなんて、長い土手の田畝の中におき忘られたように続いているのが、あれはつまり亡びた法律、亡びた道徳のシンボルよ」

河の流れは夥しい水の圧力となって流れているのではあるが、河にはいつもその堤をかみ、堤と昼夜をわかたず摩擦してやがてその岸を必然に従って変えてゆく先頭の力としての河岸沿いの水というものがある。中核の圧力をこめてつたえて岸を撃ち、河の力がこわした堤の土の下に埋まることもあるこの岸沿いの河水の意味を、「女の一生」の中で作者は何故認め得ないのであろう。

「何にしても生活が」根本だということ、「思想というものは母の愛とか肉親の愛というものより遙に深いもの」であることをとりあげている作者は、「驚くべき変化であると同時に恐るべき変化」として若い時代の関心が社会に向けられていることを眺めている。昔は「地震、雷、火事、親父」がこわかったが、今では「地震、雷、火事、息子」だと公荘の洩す苦笑は、あながち公荘のみのものだと云えないものがある。

自分をよい母と自任している允子が、どんなによい母だって、息子に出てゆかれてしまうのだ、という結論から、再び医者として自立する心理の過程に、私は一応の積極的な意味を認めると同時に、現代の中流家庭内におこり