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やまつばき
山椿
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1948(昭和23)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,911 字 · 32 页
従妹は逆らわずに笑いながら、削られた物もたいていは買い調えるという風だった。
結婚式はとどこおりなく終った。祝いの酒宴もなごやかに済み、招待客たちが帰ったあと、両家の親族だけで改めて盃がとり交わされた。それは半刻あまりかかった、そしてこれらの人々がいとまを告げたとき、いつか外は雪になっていた。――主馬はまだひと役ある、花嫁が仲人につれられて奥へゆくのをしおに、彼は別棟になっている隠居所へ顔をだした。そこでは役所の下僚たち十人ばかりが、彼等なりに気楽な祝宴を張っていたのである。
主馬が席に坐るとすぐ、みちが銚子を持って側へ来た。彼女は接待役をしていたのだが、みると眼のまわりや頬が赤く、息も少し荒いようだった。結婚祝いでもあり、みんな親しい者たちとはいえ、未婚者の多い中で色に出るほど盃を受けるのは不作法だ。主馬はふきげんに眉をひそめ、低い囁き声でたしなめた。
「みぐるしいじゃないか、赤くなっている、どうしたんだ」
「脇田さまと小倉さまでかかってお強いなさるのですもの、それにわたくしも――」
みちはふと眼をそらした。
「もうみなさまとは、これでお別れでございますから」