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さざんか

山茶花

佐左木 俊郎

「文章倶楽部」1927(昭和2)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,001 字 · 10 页

青空文庫

」

爺は、眼のあたりを少し赤くするようにして、息苦しい呼吸の間から、申しわけでもするように、吐切れとぎれに言った。そして、また腰をたたいたり、何か言い残したことがあると言うように、口をもぐもぐさせながら、とつおいつ山茶花を眺めていて、容易に家の中に這入ろうとはしないのであった。

「なあ長作。この山茶花は、ふんとにいい花、咲くちゃなあ!」

「…………」

長作は、爺の方を、白眼で、ちらりと見たきり、なんとも答えずに、腰から煙草入れを抜き取って、煙草に火をつけた。

爺は、ひどく間の悪さを感じた。そこで、足もとへ唾をして、それから山茶花のまわりを一巡した。

「なんて言ったって、こんだけの山茶花、この界隈に無えがら……」

「山茶花など、どうだって……それより、早ぐ寝で休んだらいかんべな、爺つあんは。」

長作は、煙草の煙を吐きながら、また、爺の方へ横目を遣った。そして、そこには重々しい雰囲気が醸し出された。

爺は、伜の気持ちを繕うようなことを、何か言い出そうとして、口を二三度動かしたが、ただ、口を動かし得たに過ぎなかった。さらに爺は、この山茶花を売って、いくらでも生計のたしにしたら……こう言おうと思ったが、それも思っただけで、口に出す前に、伜が、どういう返事をするかが気になった。